mikarn777’s diary

歌詞や小説、時々日記など載せていきます。

新曲が出来ました!

なんと、なんと、なんと

オリジナル楽曲が完成しました!

ずっと曲を作りたくて何年も過ぎましたが、やっと完成しました!

ぜひ聴いてみてください!

 

 

youtu.be

 

ああ、イラストが素敵過ぎる。

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はじめまして MIKARN/未完です。第一子が完成しました。 可愛がってください。

「It's all your Fault」

words MIKARN 

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music シエシ度

illust わんけー

TigerHorse(tigerhorse2021)

小説、歌詞、ブログ、私の世界、覗いてください。 https://mikarn777.hatenablog.com/ 今後も定期的に新曲をアップロードして行く予定です。チャンネル登録よろしくお願いします。20曲くらい構想があるのですが軍資金が足りません。そこでクラウドファンディングを立ち上げたのでお力添えして頂けたら幸いです。

クラウドファンディング.リンク https://camp-fire.jp/projects/view/432938 この曲はまだ完成ではありません 人の声で歌ってみた MAD等のcover楽しみにしています。 皆様のお力をお貸しください。よろしくお願いします。

 

うう、感無量でございます。

 

【しょくざい】第2話【幸福論】

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 その日はとても混んでいた。この地獄のレストランで客の出入りが多い。ここで働く設楽は考えていた。ここが混むということは現世ではあまり景気が良いとは言えないことだからだ。ここに来る客は全て自ら命を捨てた者。しかしこの地獄が忙しいとはいえやって来る客にわざわざ悲しみや哀れみという感情はない。だがなんとも複雑な気持ちだ。混ざりたて多色の油絵の具、黒や紺たまに赤それを何度もぐるぐると中心を円に混ぜていくような感情だ。とても息苦しい。
 今日は設楽がこの地獄に来てから一番混んでいる。ほぼ満席だ。設楽は思った。いったい下でなにがあったのだろう。
 そんな中また1人男性の客がこの店に入り込んだ。見た目はだいぶ若い、20代前半に見える。
「いらっしゃいませ」
 一人がそう放つと他の奥にいるスタッフがまちまちに「いらっしゃいませ」と続ける。
「今日何かあったんですかね」設楽は先輩の石田に問いかける。
「おれも初めてだよ、集団自殺でもあったんじゃないの?」
 手際よく料理をしながら設楽と石田は何があったのかを探ろうとしていた。
 先程店に来た若い男は現状を理解出来てない様子で呆然と壁を見ていた。設楽は水を置きに行く。
「いらっしゃいませ」
「あ、はい、あの、俺死んだんですか?」
「はい、そうなりますね」
 ここに来るものは皆自ら命を絶った人間だ。ここは地獄の給仕所。それに違いはない。自殺したのに死んだことに気がついて無い事などあるのだろうか不思議な話だ。
「マジか俺死んだのか」
「まだ未練がございましたか?」
 設楽が丁寧に聞き返す。
「未練ありまくりですよ、俺まだ23ですよ、マジかよ死んだのかよ、戻れないんですか?なんとか、今週のマンガ読まないと、それに仕事もあるし、どうしよう、なんとかなんないですかね」
「そうですね、戻るのは出来ませんね」
「嘘だろ」
「まず、水でもいっぱいどうですか?落ち着きましたしら注文を伺いに来ますね」
 設楽は不思議そうな顔をして厨房に戻った。
「どうだった?」
「それが自分が死んだことに納得してないみたいです」
「どういう事だよ、自殺じゃないのかよ?」
「そうですね、変なんですよ」
「まあいいや、取り敢えず作らないとな」
 石田は大きなフライパンを片手で回してチャーハンを炒めていた。
 設楽も野菜を切り始める。厨房は大忙しだ。
 料理を作り。届ける。注文を取り。料理を作り。届ける。毎日これまでやってきたがこんな忙しいペースははじめてだった。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
 また新しいお客様が入店された。普段使っていない奥の席に誘導されていった。
「一体どうなってんだよ」
「そうですね、あそこの席使われてる初めて見ましたよ」
 奥の席にまで人がはいる。
「俺も初めてだよ」
 この地獄の食堂は決して広くは無い。しかし満員になる事など無かった。設楽が来てからは多いときでも10人くらいだった。今目の前に20~30人くらいいる。厨房は半狂乱でパニックに近かった。設楽たちシェフは止まることなく腕を振るい続ける。
 厨房の忙しなさとは裏腹にお客様達はどんよりと誰も口を開かない。暗く沈んでいた。
 中華にフレンチ、イタリアン、和食。設楽は額に汗を垂らしながら無難に注文をひとつひとつ丁寧に作り上げていた。
 さらにオーダーも取らないといけない。
「すいません」
「はい、少々お待ちください」
 厨房にいる人間はみんな一生懸命料理を作ってる。誰もオーダーに行ける状態じゃなかった。私は野菜を切りドレッシングをかけてサラダを完成させる。
 サラダを注文した女性に渡しにいく。そのままオーダーにいく。
 店員を呼んだのは先程入店した客で20代前半の男だ。そいつは外の様子をじっと見ていた。
「外ってどうなってるんですか?」
「眩しいですよね、私は行ったことないで分からないですけど行ってみたいですよ、注文はお決まりですか?」
 外の景色か、考える暇もない。いつもと同じ。罪人は外には出られない。今は注文が第一だ。
「外行きたいな」
「お客様はお食事が済んだら行けますよ」
「そうですか、やっぱ店員さんとか見てると死んだ実感湧かないな、お客さんもたくさんいるし」
「そうですよね、注文はお決まりですか?」
「あ、スパゲッティ出来ます?タラコの。腹減りましたよ。あ、辛くないやつでお願いします」
「かしこまりました」
 その男は外をじっと見ていた。次に行く場所。眩しくて明るい場所。私たちには縁がない場所。
 空腹の死人かこれも珍しい。設楽は急いで厨房に帰る。
「たらこスパお願いします」
「はいよ」
 設楽も考えていた。外には一体何があるのだろう。分からない。出たいと思っても出られない。一体何があるのだろう。こんなにも近くにあるのに外に出られないジレンマ。悔しい。罪の重さをまたひとつ噛み締めた。
 今が夜なのか昼なのか分からない。一日が経つ事で日にちは何となく分かるがいったい何年ここにいることになるだろう深く考えると気が狂いそうだ。設楽は料理に気を戻す。我々は何の為にいつまで存在するのだろう。分からない。


まずは沸騰したお湯にパスタを投入する。慣れた手つき無駄な動きは一つもない。湯気と泡に沈む艶やかなパスタ。味付け無しでもきっと美味い。タイマーがなりお湯を切る。
フライパンに有塩バターを中火で溶かしてタラコを加えて炒める。甘い香りが厨房を包む。じわじわと火を通す。そしてそこに醤油とマヨネーズを加えて味付けをしていく。マヨネーズが優しく溶けていく。そこにパスタと塩、こしょうを加えて、中火で全体が馴染むように炒め合わせて行くいい香りだ。そして火を止める。皿に綺麗に盛り付けて小口のネギとのりをかければ完成だ。なかなかうまくいった。自分で食べたいくらいだが客に提供しよう。

 設楽はタラコスパゲティを運びながらたまらくなった。もう何故こんなに混んでいるのか知りたくなった。このたらこスパゲティを注文した男性は聞きやすそうだったので思い切って聞くことにした。
「お待たせいたしましたたらこスパでございます。ごゆっくりお過ごしくださいませ」
「あ、どうもありがとうございます。死んでもお腹って減るもんなんですね、何か死んでもいろいろ大変そうですね、明日から会社に行かなくてもいいと思ったんですけどここでも働いてる人はいるし」
「そうですね、でもお客様は珍しいですよ、基本はあまり喉を通らない方が大勢です、」
「あ、やっぱりそうなんですね、いつもこんなにいるんですか?」
「いつもは空いてます。今日は珍しい方ですね」
「そうなんですね」
「お客様はどうしてこちらにいらしたんですか?」
「いやー、死ぬ気は無かったんですけどこれで」
 男は手首を二本の指でトントンと叩いた。
「薬ですか?」
「そうですね、脱法ハーブってやつです、この辺にいる人だいたいそうじゃないですか?新しいのが海外から入ったんですよ、ぶっ飛びすぎて最後は記憶ないですよ、まさか死ぬとは思いませんよ」
「え、自殺じゃないんですか?」
「んー、自殺じゃないですよ、死ぬ気なんて全く無かったし事故ですね」
 設楽は首を傾げたここは自殺者専用のレストランだ。何故事故者がここにいるのだろう。こんなことは設楽が来てから初めてだった。脱法ハーブは自殺とは言えないだろう。薬はやった事ないが命を捨てるほどなのだろうか。
「シャングリラ?」
 隣のテーブルに座る中年男性が入り込んできた。
「そうですシャングリラです」
「なんですかそれ?」
「薬の名前です。最初は気持ちよかったんですけどきれそうになると吐き気が来てまた追加してそんなことしてたら仏になってましたよ、俺一人暮らしなんですよ俺の体ちゃんと見つけてもらえるかな」
 男はパスタをすすりながら話していた。
「どうでしょうね、現世のことは私達には分かりかねるので」
「そうですか」
 ズルズルと音を立ててパスタをすする。
「でも勿体ないですね」
「まあ、そうですね」
「いや、そうとは思えないなあの感覚はあの薬をやらないけと経験出来ないだし、あの経験が出来た人間はほとんどいない、きっとこれから俺たちの死を見て世界からシャングリラは規制を受けて排除される、俺にとってはあの経験が出来ない人生の方が勿体ないと思うよ」
 快楽を知らないで死ぬ。人はどう足掻いても死ぬ。例えば薬物を辞めてもやってた後遺症は残るとしてそれで脳が狂ったとしよう、人生を何も考えなくて済むのならそれはそれでいいのではないのか、それは幸せな事ではないのか苦しいこともなくただ何も考えられないこと、それは幸福なのでは無いのかどうせ死ぬのだし人は思考があるから悩み苦しむ私も死ぬ前にやっておけばよかったかもしれない。人を傷つけるくらいならいっその事狂ってしまえば良かった。正常に狂うそれがどれほど辛いことなのか耐え難い。
「人生満足されましたか?」
「どうでしょう、まあやり直したことはいっぱいありますよ、まだまだ」
「後悔してますか?」
「いや、どうだろう、後悔する事は沢山ありますよ、薬物以外も、そんなのほとんどの人がそうじゃないですか?満足してない後悔もない人間なんてほんの一部でしょ?それに後悔がない人間なん超楽観的な馬鹿くらいでしょ」
「まあ、そうですね」
「お兄さんは後悔は無かったのですか?」
「まあ、ありますよ、もし生き返れたら薬は辞めますか?」
「うーんどうだろう、たぶん、またやるだろうね、今は死んでるおかげなのかそんなにしたいとはと思わないけど、生前はしたくしたくたまらなかったよ一日中。人間辞めるか薬物辞めるかなら人間辞める方を選んだよ、まあだから死んじゃったんだけどね」
「難儀ですね、私も人間辞めた身だから何とも言えないですね」
「お兄さんはなんでここにいるんですか」
「私は、うーん、それは言えないですが、でも人道を反したってことですね」
 
 それは法を犯してまで命を捨てる程の価値があるのだろうか設楽は疑問を残したまま厨房に戻った。

 

厨房に戻り料理をしながら石田と話す。
「なんかわかったか?」
「どうやら現世で最近流行っている薬物らしいですよ、だからみんな自殺のつもりもないらしいですよ」
「薬物?」
「はい、そうです」
「なるほどね、上さんはそれを自殺に判定なさったのか深い事されますな、薬物も自傷行為になるのかね」
「うーん、どうなんですかね、でも本人たちはまるで自覚は無かったですよ」
「設楽、お前はやったことはあるか?」
「いや、自分はないですけど」
「そうか、あれはいいぞ、まあ俺はシャブ中にはならなかったけどな、一度はやっておいて損はないと思うよ」
「そうですか、石田さんは何をしてたんですか?」
「俺は覚醒剤大麻だよ」
「そうですか、やっぱいいものですか?」
「そうだね、ここを出られるならもう一度してみたい物だよ、あれを知らないのは損だよ」
「何薬物の話?」料理長が話に入って来た。
「そうです、今いるほとんどの客が薬物でここに来たらしいです」
「そうか、俺も酒と薬物でここにいるみたいな物だからな、人ごとじゃないね」
「料理長もやってたんですか?」
「まあ、麻薬とセックスと殺人はセットみたいなもんだったよ、どれかを知らなければここにいなかったんだろうけど、設楽君は一度もやった事ないの?」
「はい、自分は一度もないですよ、結構真面目に生きて来たので」
「真面目ね」
「真面目に生きてたらここにはいないだろ」石田が一蹴する。
「はは、そうですね、まあ無難な人生では無かったですよ」
「そうだよな、みんな何かを背をって生きて来たんだよな、俺らの人生なんて勿論人様に誇れるような物では無かったけど、巻き戻ることは出来ないし、どれだけ悔いが残らない事が大切なのかも知れないな、今いる客もここでいったん思考を整理して、次のステージに向かって行くしかないんだよな」
「何が正しくて、何が幸せ何ですかね?無難な人生が幸福なんですかね?」
「難しい話だよな、俺も最近よく考えるんだ。博学と無知はどっちが幸せなんだろうって二人はどっちだと思う?」
「え、そりゃ、頭いい方がいいんじゃないですか?」
「そうだよな」
「いや、俺は馬鹿の方がいいと思うよ」
「うん、そうか、そうなんだよ、利口になると世の中を上手く生きられるようになると思うけど、世の中を知れば知るほど生きづらくなっていったりもするんだよ、ならいっそ何も考えることが出来なければ楽だとすら思えてくる、まあ無知な人間はきっとそんな事も考えない、何も知らないが、何も悩む必要がない、それは幸せと呼べるのだろうか薬物の話に繋がるが知っているのと知らないのはどっちが幸せなのかって話なんだよね」
「どうなんですかね、料理長、難し事考えますね」
「最近自分の存在意義を考え始めてそれはきっと人生を見つめ直す事なんだよ、二人は自分の人生に悔い無いのかい?」
「まああるっちゃあるけど」
「まあ自分も戻れるなら学生時代くらいに戻りたいと思いますよ」
「後悔や反省を繰り返す、こうやって客と向け合って自分たちの人生を見つめ直す為にこの世界は存在してると思うんだ、まあ俺が思っているだけで押し付けたりはしないけどね」
「自分もここの存在、自分自身の存在価値に疑問を持つことはありますよ、でも正直逮捕された時も裁判している時も今現在も反省というか、そういう気持ちはありませんし、今後もする気も無いです」
「いや、もちろん、すぐに考えを改める必要は無いんだよ、でも時間はあるんだ、命について見つめ直してもいいんじゃ無いかな?私たちは命を粗末にして来たんだ、他人もそして自分自身もね」
「まあ、そうですか」
「俺は、うん、どうだうろう、でも俺が刺した人間が夜な夜な現れてうなされる事はあるよ、そん時は流石に反省っていうか後悔というか、まあそういうのはあるよな」
「石田さんもそんな日があるんですね、結構繊細なんですね」
「まあ、石田君も設楽君もそれでいいんだと思うよ、それでこそ正常何だよ、お互いね、確かにここに来る人間は全員人の道をそれた人間だ、でもだからこそ普通でいなければいけない、ここではもう逃げる事は出来ないんだ、薬をやる事も気に入らない人間を殺す事も、自ら命を絶つ事も出来ない、そこにこの地獄の価値はきっとあると思う」
「確かにここはどこにも逃げられない、うん、そうだな、とりあえず仕事をしないとな」
私たちは手を動かし料理を作る。私はこれまで思考から逃げていた。何とか仕事をして考える事を後回しにして来た。しかし確かに考えなければこの地獄に意味は無いのかも知れない。考える為にここは存在しているのかも知れない。ただ日々を過ごしてはいけない、食事を提供する側も食事を取る側も命を考えなければならない。
「自分もう一回話して来ますね」

 

✳︎
「どうですか?満足できましたか?」
「はい、美味しかったですよ」
たらこパスタを頼んだ青年に話しかける。
「この先に逝く準備はできましたか?」
「ううん、どうだろう、正直まだ死んだって実感もないしな」
「そうですか、コーヒーでも飲みながら少し話ます?」
「ああ、そうですね、じゃあ一杯いただきます、アイスで」
「かしこまりました」
厨房に戻り仕込んでいたコーヒーを入れる。丁寧に。そして氷を入れる。黒く輝くその液体は焙煎された心地良い香りがする。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
その青年は一口コーヒーを飲み込む。
「美味いです」
「いつから薬はやってたんですか?」
「え、ああ、そうですね、3.4年くらい前、10代の頃からですかね」
「そんな若い頃からされてたんですね」
「そうですね、もともとは覚醒剤をやってました、大学でどうしても落とせない単位があって先輩に紹介されて貰いました」
「なるほど、集中力が上がったりするんですか?」
「そうですね、元気になります、まあ辞められなくなりますけど、でも、自分は何度もやめようとしたんですよ、流石に捕まるのが怖くなって合法の脱法ドラッグに手を出したんですけど、まあ、その結果がこれですけど、でもこれで良かったのかなーって思ったりもしますよ、どうせこのまま生きていてもろくな人生じゃ無かっただろうし、明日会社に行く必要もないですしね、正直ちょっとホッとしています」
「死んでよかったって事ですか?」
「うーん、もちろんやりたかった事とか未練とかは確かにありますけど、それより今は安心感の方がありますね、変ですかね?」
「いやそんな事もないですよ、亡くなって安心できた人もたくさんいらっしゃいますよ」
「そうですか、振り返れば、俺の人生なんか褒められた物じゃないけど、一生懸命生きたし、うん、短い人生だったけどやりきったかなって思います」
「そうですか、きっとそう思えたなら合格ですね」
「はい、じゃあそろそろいってみようかな」
「生まれ変わったら、もう一度薬やります?」
青年はただ笑顔で返事をして、この店を後にした。

麻薬を使用して死ぬのと麻薬を知らずに生きるのどっちが幸福なのだろう。果てしない快楽を知らないで生きることは本当に幸せな事なのだろうか、その時設楽はしない方と口に出そうとしたがそれを飲み込んだ。喉がなる、確かに生前似たようなことを考えた事もあった早くて楽しい人生か長くつまらない人生、これなら多くの人間が早くて楽しい方を選ぶのでは無いだろうか、これですら議論は及ぶ。同じでは無いが似ている気はする麻薬を使用して死ぬ、麻薬をやらずに生きる。物によっては世の中の快楽のトップになりうる物あるらしい。そう考えると1番の快楽を知らないで死ぬことは不幸な事かも知れない。
 死んでいるからもうどうする事も出来ないのだが、もう一度生きるとしたらどうだろうか薬物に手を出すだろうか、人間の禁忌にに手を付けたからここに落ちたのだからもしチャンスがあったら使っていたかも知れないと思っていた。
 人生とは何なのだろう。記憶を失い長く短い生にしがみつき禁忌を侵さずに死んでいく。それはとても不幸なものでは無いか。必ず終わりを作るなら好きな事をした人間が得ではないか禁忌を犯したからここに縛られているが純新無垢な魂はまた人生を与えられる、それは酷なものでは無いのか、この世界には人生にはいや生物には幸福なんてもの存在しないのかも知れない。設楽は頭を悩ませていた。
 しかし麻薬を使用した人間の周りにいた人間を不幸にする可能性は大きいのかも知れない。幻覚や暴力で周りに迷惑をかけてはどうしようもない。
 使用している本人が幸福でも被害に会う人間もいるし仮に人を殺めでもしたらそいつも一緒に地獄の住人だ。

 

視線【短編小説】

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帰宅

時間は20時頃。
私は仕事を終えて自宅のアパートに帰る。
いつもと同じアパートに。
最近何故かずっと視線を感じる。誰もいない部屋の中からどこか違和感を覚えた。
実家を出て一人暮らしを始めてからもう1年くらいになる。少しは慣れてきた。

だが何故だろう。妙な違和感は消えない。
リモコンの位置が変わっている気がする。
トイレットペーパーが減っている気がする。気のせいだろうか。分からない。
確かめる勇気もない。方法も分からない。
誰もいないはず。誰もいないはず。
そもそも部屋は狭い。人が隠れるスペースなんて場所無いのだ。
人がいるならすぐ分かる。
隠れる場所などない。
怯える必要なんて無いのだ。
私が心配性なだけだ。
そんなときドンと物音がした。トイレの方だ。思わず唾を飲む。身体が凍りついたように動かない。またドンと音がなる。違う。違う。耳に神経が集まる。無音の中私の唾を飲む音だけが聞こえる。
ドタドタと音は続く。どうやら隣の家のようだ。ひと安心する。最近気を張りすぎている。大丈夫私の勘違いだ。疲れているのだろう。今日はすぐシャワーを浴びて寝よう。
ひとつ背伸びをして天井を見上げる。
そこで真っ赤な目と目が合う。恐怖で目線を逸らす。気のせいだ。気のせいだ。気のせいだ。恐る恐るもう一度そこを見る。目はない。気のせいだ。シミが目に見えただけだ。
深い呼吸する。もう耐えられない。私は私自身の想像力に押しつぶされそうになっていた。
ソファに深く沈む。額に油汗が滲む。
そっと深呼吸して落ち着こうとする。
気分を変えようとスマホを眺める。その時ふっと背中からうなじに生暖かい息がかかる。気のせいだ。気のせいだ。気のせいだ。後ろを振り向く勇気がない。身体が固まり動けない。気のせいだ。気のせいだ。気のせいだ。ゆっくり振り向く。そこには誰もいなかった。いつも通りに自分のアパート。気のせいだ。気のせいだ。私はもう20歳になる。大人なんだ。幽霊なんて居るはずない。
最近残業も多く疲れが溜まっていたのだろう。自分を言い聞かせる。
事実何も起きてないのだ。それが何よりも証拠になる。私は靴下を脱ぎ洗濯機の中に放り込んだ。
LINEが来てる。友達からだ。
「週末飲み行かない?」今週は仕事だった。「ごめん!今週は仕事で行けそうにない。また誘って」謝罪の絵文字を添えて送った。疲れも溜まっているので本当に行きたかったが仕方無かった。
スマホを枕元の充電器に刺し。風呂の支度を整える。
服を脱ぎ。風呂に入ることにした。風呂場は冷えている。尚全裸なら更に寒い。お湯を出すがなかなか温まらない。寒い。鏡で見る自分の姿が前より細くやつれて見えた。どこかで疲れを取らないといけない。
湯気が立ち上る。お湯になっただろう。手で温度を確認する。丁度いい。頭から浴びる。全身がお湯の温かさに包まれて心地が良い。癒される。
ピンと背筋が凍る感覚。また視線を感じる。寒気もする。
いや、だが、ここは浴室何処にも人が入るスペースなんて存在しない。当たりを見渡してもやはり人なんていない。鏡に映るのは自分だけだ。何なのだろうこの違和感は頭を洗っても身体を洗っても拭いきれない。
ふと天井を見てみた。天井が空いている。私は恐怖で凍りついた。誰かいるのだろうか。そこに人が入ることは可能なのだろうか分からない。怖い。一目散に風呂場を後にした。
はあはあと息が切れる。どうしよう。警察だろうか。いやたまたま何かの原因でズレただけだろうか。この家から出た方がいいのだろうか。分からない。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
友達に電話することにした。
「もしもし」「もしもし」
「どうしたの?」
「何か家に人がいる気がするんだよね。すごく怖くて」
「どういうこと?誰かいるの?」
「いや実際はいないんだけど人の気配がするんだよね、風呂場の天井が空いてたし、あそこって風とかで空いたりすのかな?」
「どうだろう、でも人が入れるのほど広くないと思うよ、覗いて見たら」
「怖いよ」
「いま調べてみたら風で空いちゃうこともあるらしいよ、それに人が居るとしたらつめあますぎじゃない?バレバレじゃん」
「そうだよね、確かに。ありがとう。だいぶ落ち着いてきた」
「どういたしまして、どうしても気になるならカメラでも仕掛けてみたら、私はもう眠い、じゃあね」
電話切られてしまった。だが友達と話せたおかげで心身共にだいぶ落ち着いてきた。最近疲れも溜まってたし。偶然が重なってただけだろう。また何かあったら本当にカメラでも仕掛けてみよう。私は平常心を保ち風呂場に戻り。天井のフタを閉めた。水滴が落ちて来て冷たい。だがそれ以外何も無かった。物音も視線も。
寝室に向かい。床に就く。恐怖はあったが睡魔がそれに勝る。ゆっくり眠りについた。

朝になる。いつもと変わらなない朝だ。アラームがうるさい。間接照明の明かりが寝室を優しくつつむ。仕事まではあと2時間ある。支度を始めなければいけない。
ゆっくり起き上がる。朝日がカーテンから漏れて昨晩の恐怖は全くなくなっていた。
コーヒーを沸かして。歯磨きを始める。その間に服の着替えを用意する。少しシワが目立つので急いでアイロンを用意する。
泡を吐き出し歯磨きを終える。アイロンが温まっただろうか確認する。まだ少しぬるい。
コーヒーを飲んで落ち着く。暖かい。シワを伸ばしてひと段落。次は髪のアイロンを温めなければとスイッチを入れる。朝の情報番組を見ながら化粧をする。
パンをトースターに入れレバーを下ろす。今日は外回りだ。いつもより気合いが入るまだまだ化粧はかかりそうだ。パンが焼き上がる。バターを塗り。かじる。粉が落ちないように器用にかじる。口をゆすぎ髪を巻いて完成だ。今日も仕事場に向かう。

仕事

電車の時間の関係でいつもかなりはやくついてしまう。もうひとつ遅いとギリギリになってしまうので仕方ない。
「おはようございます」
「おはようございます」
下田さんだ。今日も出勤がはやい。眠そうだが仕事が始まればいつも完璧にこなす。頼れる先輩だ。
「最近どう?頑張り過ぎてない」
「大丈夫です。今日も元気です」
私はとっさに嘘をついてしまう。もう慣れてしまってる。しかし職場の人には無理をしてるとはけして言えない。
「そっか無理すんなよ」
「はい」
有難い。この一言でまた今日も頑張れる。
「おはようございます」
「おはようございます」
次々と同僚達が出勤してくる。今日もまた一日が始まろうとしていた。
「おはようございます」
「おはようございます」
「最近無理してない?大丈夫ですか?」
田無さんにも言われてしまった。そんなに私は疲れて見えるだろうか。
「大丈夫です、田無さんこそ今日もギリギリですね、また怒られちゃいますよ」
「ああ、俺も最近寝つきが悪くてね」
「そうですか」
ジリジリと朝礼のアラームがなる。全員席から立つ。部長が話すのをじっと聞く。欠伸が出そうになるのをぐっと堪える。これから私たちの一日が始まる。
話終えると外回りの私たちは外出の準備を整える。
支度は出来てる。私はカバンを持ち階段を早歩きで駆け下りて今日の仕事を始める。気合いも入る。

違和感
疲れた。19時50分。階段をコツコツ上がり私のアパートに帰る。外回りは身体的に疲れる。ふくらはぎがパンパンに張っている。はやくゆっくりしたい。
鍵を開ける。開いていた。
いや気のせいかどっちだろう。もう一度捻る。開いた。閉め忘れたのだろうか。分からない。暗闇にじっと目を凝らす。誰かいる気がする。すぐに電気を付ける。誰もいない。なんだったのだろうか最近疑心暗鬼が過ぎる気がする。誰もいない。誰もいない。誰もいない。何度も自分自身を言い聞かせる。靴下を脱ぎ洗濯機に放り込む。スーツを脱ぎハンガーにかける。全身を着替える力はもう無かった。シャツのままソファに沈み込む。
そこでテレビを付けた。違和感を感じる。確実にリモコンの位置が違う。気のせいだろうか分からない。誰かいる。いやいない。どうしよう。テレビに映るお笑い芸人の渾身の漫才が全く面白くない。頭に入って来ないのだ。何を言っても頭の中を通り過ぎる。気の利いた言い回しが今の私には全く理解出来なかったのだ。どうしよう。誰かいる。
どこにいるのだろ部屋は1K隠れる場所などない。どうしよう。クローゼットかトイレか浴室そこくらいしか隠れる場所などない。
「誰かいるの?」
小さな声を振り絞る。誰の返事もない。そっとクローゼットに近づく。
「誰かいますか?」
耐えきれず私は勢い良くクローゼットを開けた。いつも通りに上着がかけてある。誰もいない。
良かった。一安心。意識的に呼吸をする。きっと気のせいだ誰もいない。誰もいない。誰もいない。
心音があがる。胸をはち切れそうだ。トイレにも向かう。
「誰かいますか?」そっとドアを開ける誰もいない。やはり気のせいだ。安心してソファに座る。一気に疲れがやってくる。倦怠感と大きな眠気。どっと力が抜ける。テレビをボーと見ながら時間がすぎるのを感じていた。
違和感の事など忘れて私は2.3時間ソファで過ごしていた。仕事の疲れもだいぶ癒えてきた。
少し面倒だが風呂に入ろう、準備を進め整える。寒いな。寒さとはべつに背筋が凍りつく。また天井が空いていたのだ。昨日調べたら風の影響で天井が空いてしまう事もあるらしい。だがおかしいそんなに開いてしまうものなのか不思議だ。どっと脂汗が滲む。怖い。怖い。怖い。
誰かいるのではないか確かめる勇気はない。そっと浴槽を利用して天井をまた戻す。きっと風のせいだ自分を言い聞かせる。シャワーを浴びる事で現実を忘れようと悶える。きっと何かの間違いだ。そもそも空いてなかったのだ。半狂乱に頭を洗い事実を忘れようとする。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
風呂を上がりすぐに友人に連絡をする。
「また空いてたんだけど、どうしよう」
「また空いてたの?誰かいるじゃん(笑)」
「笑い事じゃない、本当に助けて欲しい」
「いや、引っ越すとかしかないじゃんとりあえずカメラ仕掛けてみよう、カメラこっそりバレないところに」
「わかった、やってみる」

撮影
私は急いでドンキホーテで小型カメラを買った。五千円で買えた。何回も使う訳では無いので画質とかは何でもいい。今の私には誰もいないという現実だけで十分だ。
私は翌朝小型カメラを部屋のテーブルの上に仕掛けて仕事に向かった。
写っていて欲しい気持ちと写っていて欲しくない気持ちに板挟みに押しつぶされそうだ。
とにかく私は仕事に向かう。
「おはようございます」
「おはようございます」
今日も下田さんははやい。仕事は大変だが大人が沢山いることで家にいるより安心する。今日も外回りだ。朝礼が始まり少しづつ頭も冴えていく。今日も頑張ろう。

仕事が終わり帰路につく。20時。今日も疲れた。クタクタで帰るがカメラの存在を思い出して緊張感が高まり始める。自分のアパートの階段をあがる。1歩ずつ緊張感が高まる。部屋の前で大きく深呼吸をする。
鍵は閉まっていた。当たり前のことだが安堵する。その安堵は束の間部屋に入ると異臭がする。
その匂いは臭い訳では無いが私の匂いじゃない匂いがする。気のせいだろうか不安がよぎる。目の前には誰もいない。誰か居るはずはないのだ。カメラに目を落とす。仕掛けた時と同じ位置にある。同じ角度同じ色。撮影中のランプも赤く点滅している丁度容量が切れたみたいだ。
確認をしてみよう。
固唾を飲む。怖い。怖い。怖い。だがハッキリさせないといけない。私の気のせいなのだ。
ゆっくり録画を再生し始める。何も無い私の部屋だ。人影が映る。どうやら朝の私だ。カメラをセットしている。一安心する。何もない時間が始まる。
早送りのボタンを押す。ずっと何も変哲もない私の部屋がずっと写っていてる。

いや、私の気のせいは気のせいでは無かった。人がカメラの前を通り外に出ていった。私の体はガタガタと震え始めた。怖くて見るのを辞めたいが動くことも出来ない。どうしよう。早送りは続く。停めなくては指が震えてカメラを停止できない。
私の息は荒くもう少しで気を失いそうだ。早送りは続く。画面を見てるとまた人影だ。それはだんだんカメラに近ずいてくる。男だ。
「あれ、え、なんで?」
そこに映るのは同じ職場の田無さんだった。私は半狂乱になり画面に映る現実を理解出来なかったのだ。少しづつ田無はカメラに近づき丁度画面を田無の顔が半分覆いニッコッと笑った。私はブルブル震えて何も出来ない。

そのあとまた画面に人影が映る。キョロキョロと挙動不審だ。よく見ると私自身だった。カメラに近づきそこで録画は終わっていた。

どうしよう。どうしよう。そうだ。警察だ。どうしよう。ケータイが見つからない。身体の震えが止まらない。ポケットの中をを震えながらケータイを探す。

首元にに暖かい吐息を感じた。それは気のせいでは無かった。

廃病院【短編小説】

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これは昔ある廃病院で体験した話です

 

 

 

学生時代友達が車を買ったというので
仲間4人でドライブに行くことにしました。

中古車でしたがとても性能が良く友達は自慢気に乗っていた事を覚えています。

深夜お金も無い私達の遊び方というとその頃心霊スポットを巡りそこでの肝試しが流行っていました。

その日も友達が調べてきていて隣の市にもう使われていない廃病院があると言うのです。

正直恐怖はあった物のその場の話は盛り上がり早速向かう事になりました。

友達の運転で向かうことにしました。少し眠かったが話が盛り上がり楽しい道中だった記憶があります。

1時間くらいでしょうか目的地に着きました。

外観は思ったよりは綺麗でした。まだ使っているような白くて清潔感のある外観。木々に囲まれてそれはゆらゆらとまるで私たちを歓迎するように揺れていました。


しかし近くのコンビニに車を止めて歩いて近寄って行くと遠くから見た印象とは異なり壁には落書き、そして割れたガラスがそこらじゅうに転がりどんよりとした重苦しい雰囲気に廃病院なんだと改めて感じさせられました。

正直恐怖心はありましたが仲間の手前誰も怯えた様子は見せず中に入って見る事になりました。

真っ暗な病院内にじゃりじゃりと足音がなりました。それくらい足元は荒れていたと思います。

仲間たちとそれぞれ色んな部屋を観察してまわりました。中は荒廃してガラスが飛び散り危険な状態でした。

真っ暗な病院内私たちのスマホの明かりだけがゆらゆらと照らしていました。その頃は恐怖心よりは好奇心が勝ってました。

一歩一歩進んでじゃりじゃりという音が静かな病院内を包んいました。ある部屋には色んな医療器具がありました。まだ使えそうにも見えました。

違う部屋も散策するとまたジャリジャリと音が響く。壁の染みが人の顔にも見えました。気のせいだと思い込むみます。

ここはなんの部屋だろう薬品の匂いだろうか鼻をツンとする香りが漂う。恐怖と好奇心で私の心拍数が上がっていました。

もう十分だ。私はもう帰りたいと思っていました。

「2階に上がって見ようぜ」
仲間の声に一斉に皆が振り返る。静まり返った院内に声が響く。私の感想を裏切る空気の読めない友達の言動。

しかし仲間の手間怖いとは言えませんでした。


1階の散策も一通り終わり皆で2階に上がって見ることにしました。ネットの噂では2階に少女の霊がいるらしいです。

トントントントン。階段を上がる靴の音が響く。


2階につきました。しかし廊下からでは噂通りの幽霊は視認すること出来ませんでした。


ゴーと風の音が院内に鳴り響く。窓が割れているので廊下に居ても風が届く。暗く不気味な雰囲気は更に恐怖を煽っていました。

また私達はジャリジャリと散策をはじめました。

友達は早々と奥の部屋に行ってしまいました。私は手前の部屋に入ってみることにしました。

そこにはカルテと言うのだろうか医療関係の資料がそのまま放置されている。何が書かれているのだろうかは分かりません。触る勇気はありませんでした。

ジャリジャリ。ハサミやメスも落ちている。

ジャリジャリ。1人ではないと仲間たちの足音が私の恐怖を軽減してくれていました。

「なんかあった?」
「んー特に、カルテみたいなのはあったよ」
「なんも起きないね」
「そうだね、屋上行ってみる?」
「屋上あるのか、行ってみるか」

私達は集合して屋上に上がることにしました。

トントントントン。また階段に音が響く。誰もいない大きな建物だとこんなに響くものなのだろうか。珍しい体験でした。

屋上に上がるとポツンとコンビニの明かりが見えました。友達の車は丁度ここからは見えません。

夜風が強い。だがどこか心地よかったです。屋上は開放感があり重苦しい恐怖心からは解放されていました。

しかしまた中の階段をくだらないといけないのが友達には言えなかったが正直怖かったです。

「帰るか」
「そうだね」

私達は階段を1段づつ下り始めた。トントントントンとまた音が響く。
トントントントンと狭い空間で私の恐怖が伝染する。
皆の足が少し早くなりました。
そして2階まで降りました。ゴーとまた風の音が響きました。

しかしそこで私は気付いてしまった。風の音だと思っていたそれはよく聞くと男のうめき声にも聞こえました。

それは口に出すことは出来ませんでしたが皆気付いていたと思います。

「ごぉぉ」

うるさい。うるさい。うるさい。

「これってさ」
「違うよ」
私は友達が言おうとした事を制止して怒鳴ってしまった。それは反響して院内を駆け巡った。

違うよ。違うよ。違うよ。うよ。うよ。

「ごぉぉ」


「やっぱり、男の声だよ、霊いるんだよ」
「いないよ」

いないよ。いないよ。いないよ。いよ。いよ。

「いるよ」反響が終わると耳元でハッキリ男性の声がしました。


私達は声を確認すると駆け足でその場を去りました。


あの声はなんだったのでしょうか今でも分かりません。

思い出すだけで恐怖が蘇ります。

今でも時々あの声が聞こえます。
気のせいですよね?

もう一人の住人【短編小説】

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今日はすごく楽しかった。彼と付き合って3ヶ月記念日。彼には私の買い物付き合わせちゃったけど楽しんでくれたかな、ショッピングモールを歩き回ったけど私は一日中楽しかった。彼は優しく付き合ってくれた。

2人とも歩き続けたせいで足はパンパンに疲れていた。クタクタで帰路につく。

彼と一緒に私の部屋に帰ってきた。鍵を開けて部屋に入る。もう、直ぐにでも荷物を下ろしてソファに腰をかけたいと思った。

そんな中愛犬のマロンにお出迎えされた。今日も相変わらずキュートだ。あまりの可愛さに今日の疲れも吹っ飛んでいく。

マロンは部屋中を走り回る。ご機嫌だ。彼氏が来てもあまり鳴きはしない。お利口な子だ。

「かわいいね」

「今日は機嫌がいいね、全然吠えないし」

彼は歩き回るマロンをつかまえて撫で回す。マロンも嬉しそうだ

私は台所にマロンのエサを取りにいった。皿に盛り付けて。マロンに渡す。一日留守にしてしまったので少し多めにあげた。

マロンはまだ走り回る。

「あれ、食べないね」

「お腹減ってないんじゃない?」

「最近あんまり食べないんだよね、元気なんだけど」

マロンはまだ元気に走り回っていた。私は最近のマロンの食の細さが少し気になったがテレビのリモコンを探した。

テーブルの上にある。いつもと違う場所だ。

「あれ?ここに置いたっけ?」

「それは分からないよ」

彼に聞いても朝は一緒にいなかったのだから分かるはずない。私もうる覚えだ寝ぼけていつもと違う場所に置いたのかも知れない。

テレビをつけてみた。

テレビでは夜のニュースがやっていた。どうやらこのアパートの近所で殺人事件があったらしい。物騒だなと思ったがどこか他人事に感じて危機感は無かった。

「これ近くね」

彼氏が言った。

「そうだね、怖いね」

「物騒だな、戸締りちゃんとしないとね」

彼氏は心配してくれていたが私はそんなに危機感は無かった。テレビの中で起きてる事が何処か他人事であんまり現実味が無かった。

私は小腹が空いたのでパンを焼くことにした。袋から2枚取り出してトースターに入れて焼けるのを待つ。

「食べる?」

「食べる」

一枚は彼氏にあげることにした。

袋入りのパンの枚数が少し減っている気がする。

気のせいだろう。

テレビでは明日の天気のニュースが流れてる。明日は雨らしい。仕事には傘持ってかないといけないな。

「明日雨だって」

「そうらしいね、嫌だね」

「最近はずっと晴れていたのにね」

「まあ、しょうがないよ」

パンは勢い良く焼きあがる。

「焼けたよ」

「イチゴジャムでいい?」

「うん、なんでもいいよ」

私はイチゴジャムを冷蔵庫から取り出して熱々のパンに塗りたぐる。ジャムがパンの熱で溶けてキラキラ輝いて宝石のようだ。

「はい」

「ありがとう」

彼と1枚づつかじりついた。やはり焼きたては美味い。私達の小腹は満たされていった。

腹が満たされるとどっと眠気が襲ってきた。
目を空けようともまぶたが重い。

私はうつらうつらしていたが寝る前にどうしてもシャワーを浴びたかった。しかし睡魔に勝てそうに無い。

そんな私の欠伸につられて彼も目をこすっている。

「先にシャワー浴びちゃうね」

「うん、いってらっしゃい」

どうにか私は睡魔に勝ち浴室に入った。

シャワーを浴びる。暖かい。気持ちが良い。

 


浴び終えて髪を乾かす。だいたい30~40分経過しただろうか入った時間は覚えていない。

私がパジャマに着替えて部屋に戻ると彼は眠りについていた。

余程疲れていたのだろうその寝方はベットを横に体が少しはみ出ていた。

彼はギリギリまで睡魔と戦ったのだろう。
可哀想にこのままでは寝違えてしまいそうだ。そんな姿さえ愛おしいと感じた。私はスマホで写真を一枚撮った。

私は彼を起こさないように隣に寝ることにした。彼の匂いがする。幸せだ。

私は少しづつ目を閉じて眠りについた。

 

 


「何?」
私は真っ暗中シャワーの音で目を覚ました。
一瞬驚いたが今日は彼氏が泊まりに来ていた。薄らとした意識の中で少しづつ理解した。きっと彼氏だろう。

そう思ったがこんな時間にシャワーを浴びるだろうか脳裏に疑問が過ぎる。

混乱する頭だが現状を理解するまでに時間はかからなかった。

彼氏は隣にいる。隣で寝ているのだ。私は怖くなり彼氏に抱きつく。浴室には誰がいるのだ。誰もいるはずが無いのに何故。

体はブルブルと震え出す。目は少しづつ闇に慣れてきていた。

眩しい。浴室の扉が開き照明が零れる。姿は逆光でよく見えない。

「あれ起こしちゃった」

浴室から出てきたのは彼氏だった。

「え、そいつ誰?」

隣には知らない男がいた。

二人の彼氏【短編小説】

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いつもと同じ部屋。いつもと同じ香り。いつもと同じ人。いつもと違う光景。

私が体験した不思議な話。この話は本当に不思議な話だったので覚えてる範囲でここに書いてみます。

私は今から約3ヶ月前に付き合い始めた大好きな彼氏の家に泊まっていました。何の変哲もない1日でした。その日も幸せで在り来りな事。二人でテレビを見たり一緒にご飯を食べて幸せな夜を2人で過ごしました。本当に幸せな時間を過ごしていました。二人で一緒の布団に入りずっとこんな日が続けばと願っていました。
 
 それが朝起きたら3人になっていました。私はまだ理解出来ません。彼氏が2人います。何故でしょう。

1人は怯え。1人は私を抱き締めています。現状を理解出来ない。寝ぼけているのでしょうか夢を見ているのでしょうか。
昨日までは1人だけだったのに。

「お前誰?」
私を抱えてる彼氏が怯えてる彼氏に聞いた。抱えてる方も声は震えていた。
「蒼太だよ、お前ら誰だよ、立花さん?立花さんだよね?何してるの?」
「俺が蒼太だよ、なんだよこれ、何で俺がいるんだよ」
「は?俺が俺だよ、お前誰だよ、マジで意味わからん」
もう1人の彼氏は息を大きくしていた。私はただ二人の後ろで震えていました。
「落ち着けよ」
「落ち着けるかよ、警察呼ぶわ」
「待てよ、警察呼んでなんて説明するんだよ、取り敢えず落ち着いて考えようよ」
無言が3人を包み込む。何分くらいたったのだろうか、それはとても長く感じた。二人の彼氏は一人はベットの上、一人は椅子の上に座っていた。私は彼の隣に座りその二人様子をじっと見つめていました。
「何が起きたんだよ、まず立花さんは何してるの?」
「何してるのって、昨日泊まってそのまま一緒に寝たからそのまま」
「え、俺と立花さんが?何で?」
「何でって恋人だし」
「え、いや、違う」
彼は気が動転しているのだろうか私と昨日一緒にいた事を忘れているようでした。
「昨日は映画を見て、一緒に寝た。俺が本物だ。俺が本物だ。」
もう一人の彼は一点を見つめながら小言を繰り返していた。彼も気が動転しているのでしょう。私も焦りはあるが二人を落ち着かせなければいけない。私はキッチンに行き三人分のコーヒーを沸かせる事にしました。
 その間も二人は黙り込んでいた。
「立花さん何でコーヒーの場所知ってるの?」
「だって何度も来てるから」
「俺と立花さんが?分からない。やっぱりおかしい」
「俺とな。お前じゃない、俺と遥が付き合っているんだ。何度もコーヒーを作ってもらった。俺が本物だ。」
「まってちょっと、すぐにわくから、一旦落ち着いて」
はあ、二人同時にため息をこぼす。やはり二人とも蒼太だ。私の中の恐怖は少しづつ消えていて好奇心の様なものがじわじわと湧いていた。椅子に座っている方の蒼太は確実に私の知っている蒼太で昨日までの蒼太だ。そのおかげもあり安心感もあった。
湯気が立つ。コーヒーを二人の元に置きにいった。
「いったいどうなってんだ、現実なのかまだ理解出来てない、どうしたらいんだ」
私の知っている方の彼氏は私の腕を組み少し怯えている。こんな時でも私は彼を可愛いと思ってしまった。
もう一人の彼は布団を半分被ったままベットから動こうとしない。何でこっちの彼は私の事を知らないのだろう。いや名前は知っているようだ。だが仰々しく苗字で呼んでくる。
「いつから付き合っているの?」
「いつからってイルミネーションを見に行った時だよ、自分に質問されるの気持ち悪いな」
「自分に質問するのも気持ち悪いよ」
 二人とも機嫌が悪い。一触即発しそうだった。私が何とか間に入り上手く中和しないといけないと本能的に感じました。
「もっと本人しか知らない質問すればいんじゃない?」
「あ、ああ、そうだな、誕生日は?」
「7月22日」
「正解」
「血液型は?」
「A型だよ」
「正解、はあ、どうでしよう、思いつかないな」
「ちょっとまて次は俺に質問させろよ」
「あ、ああ、いいよ」
「母親の名前は?」
「聖子だよ」
「正解」
「父親の名前は?」
「正樹」
「正解」
「ちょっと二人とも何か調べれば出来そうな質問ばっかりじゃんもっと何か無いの?」
二人は同時にコーヒーをすすった。少し考える。
「はじめて見た映画は?」
ゴジラだよ、他の怪獣がいっぱい出るやつ、あの、ほら名前は出ないけど」
「んー、正解だ、これは本当に俺かもしれない」
また二人は同時にコーヒーを飲んだ。
私はそんな姿が愛おしく思えて笑えてきた。
「立花さんは何してるの?」
「何してるのって昨日から一緒にいたじゃん」
「どうしても思い出せない、やっぱり変だよ、立花さんがいるのは、俺がいるのも変だけど」
「何で私の事を覚えないの?」
「いや立花さんは知ってる。仕事で一緒じゃん、でも付き合ったりはしていない、うちの場所も知らないし、コーヒーの場所も知らない。俺に彼女もいない」
「やっぱり偽物だな、俺が告白してほぼ毎週彼女はうちに来てくれたし何度もコーヒーを沸かしてくれた、料理も作ってくれたじゃん」
 本物の蒼太は優しかった。偽物の蒼太は私と過ごした日々を全く覚えていなかった。悲しかったです。蒼太が何人いても私を知らない蒼太がいるのは傷つきました。少しづつ涙が出てきました。私は蒼太の事をこんなに知っているのに全く理解が出来ませんでした。蒼太なのに蒼太じゃない彼をじっと見つめる。彼は怯えた目でこっちを見ている。
「動くなよ」
「何でそんな事言うの」
「近寄るなよ」 
「大丈夫だよ怖がらないで」 
 彼は布団にくるまりながらじっと睨みつけてくる。それは小動物にも見えるし肉食動物にも見える。とても恐ろし目だ。警戒と不安が混じり合い攻撃的な表情をしていた。荒い息だけがこの沈黙の部屋に響いていた。
「気を付けて」
「うん。大丈夫」
「出ていけよ、出ていけよ」
彼が怒鳴る。部屋に響くその声は私を一瞬怯ませた。
「俺の部屋だからお前が出ていけよ」
「いいから出ていけよ」
 彼は勢いよく起き上がり私を力いっぱい突き飛ばした。私は床に座り込むしか無かった。
そして彼と彼は同じ服を掴み合い。お互い引っ張り合う。お互い同じ力なのか全く微動だにしない。
「遥助けて」
 彼が叫ぶ。私は慌てて何か彼の助けになる物を必死に探した。私はテーブルの上にあった灰皿で彼の頭を力いっぱい殴った。
「うっ」
 彼は苦しそうに死ながらも私の彼に鬼の形相でしがみつく。
「遥もう1回」
 私は彼を守るために彼を殴った。ドンと硬いもの同士が重なる鈍い音が響く。力が抜け膝から崩れ落ちる。それでも彼は必死に抵抗する。私は狂気の中無我夢中でガラスの灰皿を振り下ろし続けた。
 
 そこから私は意識を無くした。私は気が着くとそこに彼が一人。赤と黒の混ざった液体を零しながら白目を半分開けていた。ピクピクと痙攣している。私は灰皿を手に取り偽物の彼に口付けをした。

ハンバーグ【短編小説】

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最近夢を見る。

僕の好きなハンバーグの夢。

子供っぽいだろうか

でもそんな事を言いたい訳では無い。

僕が見るハンバーグの夢はまだ途中

美味しそうな焼きたてでは無い

それは捏ねたひき肉。

赤と白を混ぜたような色。

大きな大きなひき肉。

部屋いっぱいの鉄のような匂い。

まるで食欲がわかない。

何故ならその肉の中からは人の腕や足そして生首がはえる。

なぜこんな夢を見るのだろう、自分で自分が理解出来ない。

それは夢だと理解しているのにやけに鮮明で目が覚めた後にでも匂いわや感じる日がある。

今日で何日目だろうか

今日もあの生々しい夢を見て、逃げ惑い恐怖で飛び起きる。

息が荒い。苦しい。少し頭痛も残る。油汗がまとわりつく。

何日目だろう夢と理解しているのに健やかに眠る事が出来ない。

僕は睡眠不足で重い目を擦りながら洗面所に向かい蛇口を捻り水を出す。

コップになみなみに注ぎ。一気に飲み干す。

徐々に呼吸は整い少し動悸は落ち着く。

いったいアレは何なのだろう

毎日毎日何を見せられているのだろう

ココ最近はハンバーグなんてたべてないし
作ってもいない

僕の記憶のバグなのだろうか

それとも呪い

そんなオカルトは信じていないしそもそもそんな不徳な行為もした覚えもない。


眠い。寝たい。

でももう夢を見たくない。

僕はカーテンを開いた。朝日がこぼれる。
まだ4時なのにこんなに明るいのか

ため息が零れる。

 

肉の塊。

それが呻く声。

うるさい。低く。大勢の声だ。

耳を塞いでも聞こえてくる。

見た目も醜い、

ソレからは大量の手足がまばらにはえていていて

醜い。

これは夢だ。理解は出来ている。

いつの間にか寝ていたのだろう。

肉から生えたいくつかの顔達は悲痛な表情で何を呟いている。

何を言っているのかは解らない。分かりたくもない。五月蝿い。

匂いもきつい。死臭というのか生臭い。嘔吐しそうだ。

夢と理解しているのに逃げられない。

白く大きな部屋の中大きな肉の塊が蠢く。

そいつが通った後はジメジメと床に何かがこびり付く。

ゆっくりとこっちに向かってくる。

見たくない。見たくない。見たくない。

見たくないのに視線を逸らすことは出来ない。

アレはいったい何なのだろう

ゆっくり、ゆっくりと近づいて来る。もし捕まったらどうなるだろうか、アレの1部になってしまうのだろうか

これは夢だ。夢のはずなのに

怖い。怖い。怖い。

どうすれば目が覚めるのだろう、思い出せない。

「た、く、み」

ん?

今、僕の名前を呼んだのか?

 

心臓の鼓動のように大きくなったり小さくなったりしている。

 

はっと目が覚める。

苦しい。

寝不足だ。寝汗も滴る。行きも荒い。

休みの日ならまだ眠りにつきたいが。

今日は卒業に必要な単位の授業がある。

大学に行かなければならない。

私はパンをを2枚袋から出しトースターに突っ込んだ。

パンが焼き上がるのを待つ間に冷蔵庫に入れて置いた缶コーヒーを取り出す。

眠気覚ましに一気に飲み干す。

苦い。

丁度よくパンも焼きあがる。

トースターから取り出していちごのジャムを塗りたぐる。

すると白のキャンバスは朝日も交えて赤く艶やかに色めき立つ。

しかし寝起きのせいかかじってもあまり味がしない。

それでも構わない。空腹をしのげればいい。

かじる。音を立ててかじる。微々たる美味を味わいながら

テレビに目を通すと朝の爽やかなニュースが心を落ち着かせる。

朝のニュースはいい。あまりエグいのをやらないからだ。

夕方や夜のニュースは見れたもんじゃない。

感受性豊かな僕は打たれ弱い。ニュースにはそういう力がある。

だから朝のニュースだけ見ることにしている。

食事を終え、歯を磨く。洗面台に映る自分自身は自分でも分かるほど衰弱していて大きな黒いクマが出来ている。

ため息がこぼれる。

何時になったら終わるのだろう、何時になったら解放されるのだろうか

早くどうにかしたい、この日々を

自殺をする人間はもしかしたら同じ夢を見ているのでは無いだろうか

不安になる。

この地獄から開放されるなら死という選択肢も見えてくる。

 

授業は退屈な物だ。

基本は板書を自分のノートに写す作業、テストも丸暗記すれば点数は取れる。

しかし必修科目だから出るしかない。

退屈だ。

僕にとってこの時間は睡魔との戦いだ。

とても苦しい。

最近気がついたが昼間にはアイツは現れない。

夜一人で寝ている時に出会う、何故だろう、特にストレスのかかる事はしてないはずなのに

眠い。

肘を立てて自分の頭を支える。

板書をひたすらに移す作業は続けないといけない。

目を擦る。

眠い。

シャーペンで腕を少し刺してみた。

痛い。

意識はここに戻ってきた。荒療治だが仕方ない。僕はまたひたすらにノートに書き写す作業に戻った。

普段は長くは感じないこの90分も僕には永遠に感じた。

教授の話も一定で優しくまるで子守唄のように聞こえた。

もう限界だ。

僕はそのあとの記憶はない。

気づけば昼の時間を知らせるチャイムがなっていた。

ランチはいつも彼女と食べる。

毎回大学の中にあるカフェで一緒に食べる。

昼時はいつも混んでいるが今日もいつもと同じ席に座ることが出来た。

「おまたせ」

彼女が来た。モノトーンの私服だ。初めて見る服だ。彼女はいつもより大人っぽく見えた。服に無頓着な僕には着こなせないようなコーディネートでとてもオシャレに見える。

童顔で顔も整っている。僕の自慢の彼女だ。

「美咲はけっこうかかった??」

「最後に小テストやってだいぶ時間かかった、最悪だよね、けっこう難しかったし、しかも成績に反映するんだって、皆からは大ブーイングだよ、だこら嫌われるんだよ、まったく」

「そ、そう」

「あれ、拓海、顔色悪くない?最近体調悪そうだったけど、今日は酷いね?ちゃんとご飯食べてるの??」

「ま、まあ食べてはいるんだけど」

「しっかり食べないとダメだよ、ほら!」

僕の今日の定食の唐揚げを無理やり口に突っ込んできた。苦しい。どうにか飲み込む。呆然と彼女を見る。

彼女はしてやったりの表情でこちらを見てる。

そうして自分の定食を食べ始める。

不満はあるがそれは言わない。自由で奔放な彼女に惹かれた。それは雄々しくもあり、気高さもある一緒にいると圧倒的な安心かで包んでくれる。

とてもいい彼女なのだ。

そんな事を考えてると彼女は既に半分ほど食べ終えていた。

「拓海はなんか悩みとかないの?」

彼女は鋭い。

「んー、悩みね」

「ないの?」

「それが最近寝不足なんだよ」

「バイトとか?」

「いやそうゆう訳じゃないんだけど、なんて言うか悪夢を見るだよね、そのせいで最近ぜんぜん寝れないんだよ」

「何それ、子供じゃないだから」

彼女は笑った。

「そのレベルじゃないんだって毎日毎日ほんと同じ夢を見て、苦しいんだよ、ほんとに辛いんだってば」

「そう、じゃあ一緒に寝てあげようか?」

「何言ってるんだよ」

「別にいいじゃん、付き合ってるのだから何か問題でも??」

「まあ、そうだけど、そういう事じゃないンだけど」

「じゃあ決まりね、バイト終わったら今日泊まりに行くから」

「あ、ああ、」

「なに?嫌そう」

「嫌じゃないんだけど」

「ん?」

「いや、わかった、待ってるね」

「はーい、久しぶりだから楽しみ」

僕も楽しみだ。だが彼女がいたら夢は変わるものだろうか、不安は残る。

今日はバイトは無い。用もない。

夜に彼女が来るだけ、それまで退屈だなまだ寝る訳にはいかない。

冷蔵庫から缶コーヒーを取り出す。朝と同様一気に飲み干す。

苦い。

これ美味しいと思って飲んでる人はいるのだろうか苦いだけだ、僕はただの眠気防止に飲み干す。

そしてYouTubeを見ながら時間をつぶす事にした。

ボーと。睡眠と現実の間にいた。勝手に再生されてる動画を開いた記憶はない。

何時間たっただろうか


そっとソファに腰を下ろしているとチャイムがなった。彼女だ。

「おつかれ」

「お疲れ様」

ロックを外すと彼女は慣れた手つきで冷蔵庫に飲み物と食料品を分けて入れる。

「ありがとう」

「飲む?ハイボール

「ありがとう」

「寝つき悪いって言ってたからさ」

「うん、ありがとう」

優しさに感動すら感じたが、嬉しさと反面、彼女に自分が夢の中で怯えてる姿はあまり見られたくないものだ。

いつの間にか眠りに堕ちていたらしい

寝る前に何をしていたんだっけ

思い出せない。

いつもの白い壁。

いつもの肉の塊。

そこから無数に生えた首。口元からは肉が溢れている。見るに耐え難い。めちゃくちゃに生えた手足もうねうねと動き手招きしているようにも見える。

ソレはとても遅いがゆっくりと近づいて来る。動いた後にはネバネバの液体が床にこびり付く。

いったいなんなんだこいつは?

鬼気迫る迫力は凄まじい。僕は今日も恐怖で動けない。臭気も凄まじい。苦しい。

今日も始まるのか

僕は壁の端まで逃げて座り込み様子を見る。どこにも逃げられないのでこれが最善だ。

目が覚めるのをひたすら待つ。

ソレはまた何かを叫んでいる。あに濁点が付いたものや、おに濁点がついた物を低い声で絞り出している。何を言ってるのかは伝わらない。

僕には手立てがない。何を求めているのだ。

生臭さもあるし、恐怖で足がすくみソレに近寄るのは絶対なは出来ない。

怖い。ただ恐怖があるのみ。

ただ僕に何かを訴えようとしている様子は伝わる。なぜ僕なんだ、僕には何も出来ない。

悲痛な表情は僕に何かを訴えかけている。

どうかはやく覚めてくれ

「こいつのせいで眠れないの?」

え。

そこには彼女の姿がある。

「ここは僕の夢の中だよね?」

彼女は言葉を返さなかった。いつもの彼女なのだろうか、少しいつもと雰囲気が違う気がする。

「ぜんぶ引き抜いたらいんじゃない?」

そういうと彼女はソレに近づいていく。

「え、ちょっと」

どんどん近づいていって肉から出ている首を力いっぱい握った。

そのまま首をを力いっぱい引いてみる。なかなか出てこない。

そうならったら片足で肉を踏みつけて体重をかけてひき剥がす。

大きな断末魔が部屋中を覆い尽くす。

鼓膜が裂けそうだ。

バリバリと大きな音を出しながら首の下の小さな体は肉の塊から追い出された。

生々しく艶やかにひかる男性の裸体。肉片はこびりついている。気持ちが悪い。

「お前名前は?」

彼女がそいつに問いただす。

「は、はあ」

話そうとしてるが言葉が出てこないような様子だ。

「お前名前は?」

彼女は更に冷たく問いただす。

「あ、あ、ありません」

「はあ?じゃなんのためにここにいる?」

「な、な、何も考えないと楽で、そしたら、気づいたらこうなっていました」

「あっそ、次」

彼女はまた肉の塊に近寄る。

ミシミシと音を立てながらまた肉からそいつらを引き剥がす。

「お前名前は?」

「あ、あ、あ」

「話せないの?」

「あ、あ、すいません、すいません」

そいつは頭を抱えて怯えてる。

「次」

彼女はまた引き出した。

「あんたは?」

「ゔー、ゔー」

「なんでここにいるの?」

「あ、あ、あの」

「聞いてあげるから、ゆっくり話な」

「生きるのつらいなって思って諦めて、あ、死のうとしてたら、気づいたら、あ、 ここにいて」

「そう、生きるのはつらいよね、でも人を苦しめてはいけない、それだけはどんなに辛くてもしてはいけない、人は人を苦しめると自分に不幸が返ってくるんだ。だから本当は辛いなら幸せにらないといけないんだよ、幸せになる努力は怠ってはいけない、それで精一杯生きて辛いのも忘れて死なないといけない」

「あ、あ、そうだった、軽い気持ちで書き込んだ、自分が辛かったから人に当たってしまった、酷く傷つけてそして自殺したらしい、でもそれが間違いだった、全部自分に返ってきた、そして飲み込まれた、許してくれ、許してくれ、許してくれ」

そう言ってそいつは消えていった。

「拓海くん、あなたにも心当たりがあるでしょ、それに飲み込まれたのよ、彼女が死んだ時どんな気持ちだった?今どんな気持ち?改められる?」

「」

目が覚める。

コーヒーの香りがする。

キッチンから物音がする。

彼女の姿が見える。落ち着く。

いつも通りの彼女だ。

夢は終わったのか、何日も寝ていた気分だ。

真水の中に絵の具を垂らした何か異物が残るそんな気分だ。悪くはない。

「おはよう」

「おはよう」

「よく眠れた?」

「ああ、今日、夢に出てきたよ」

「私が?」

「そう、めちゃくちゃかっこよかった」

「そう」

彼女は笑っていた。

「よく眠れた、何かスッキリした気分だよ」

「良かった」

彼女は朝食の準備をしていた。

「何作っているの?」

「もう少し待っててね」

クチャクチャと音が聞こえる。

「ん?」

彼女は一生懸命ひき肉を捏ねていた。